白内障手術の進化を目の当たりにした感動が
眼科医としての道を決めた
私が眼科の道に進もうと決意したのは、東京慈恵会医科大学を卒業し、研修医として各診療科で経験を積んでいた1990年代前半のことです。それはちょうど、白内障手術が大きな変化と進歩を遂げている時期でした。このとき目の当たりにした画期的な手術が、眼科医を志す契機になりました。
白内障の原因は、眼のレンズの役割を果たす水晶体が濁ることで視力が低下する病気です。旧来の白内障手術は、角膜の周りを大きく切開し、水晶体を丸ごと取り出す手術を行い、手術後には度の強い眼鏡が必要でした。
しかし1985年頃から、水晶体の中身だけを取り出して眼内レンズを挿入する白内障の手術が普及し始め、白内障手術後の視力を大きく改善できるようになりました。そして、超音波を使った小さな切開から水晶体を砕いて吸い出す白内障手術の普及によって、より手術後の乱視が軽減され、さらに視力の質が向上するようになりました。超音波での小切開白内障手術をみていて『これは画期的な手術だ』と強い印象を受けました。
この白内障手術の感動はやがて眼科医の道をとことん探究したいという強い意志に変わっていきました。そして、アメリカ・ミネソタ州のMAYO CLINICで角膜移植についての研究をして帰国した後には、眼科医としての世界の最先端の治療レベルを常に意識するようになりました。